戸倉の本棚02_スマホ脳
日々、子どもたちと接する中で、「最近の子は集中力が続かない」と感じることがある。
その原因を「性格」や「やる気の問題」として片づけてはいないだろうか。
私が『スマホ脳』を読んで最も印象に残ったのは、スマホが脳に与える影響を脳科学の視点から明確に示している点である。
脳は進化の過程で「気を散らす」ようにできている。
かつて野生の世界では、周囲に注意を向け続けることで生存率を高めていた。
ところが現代では、その仕組みがスマホによって過剰に刺激されている。
目の前にあるスマホが、メールの着信やSNSの通知によって絶えず注意を引きつける。
この状態が続けば、当然ながら集中力は持続しない。
この本では、実験データや研究結果をもとに「スマホがあるだけで認知能力が下がる」と説明している。
ただの体感ではなく、確かなエビデンスがある点に説得力があった。
また、スマホを長時間使うことで、睡眠の質が落ちることも指摘されている。
特に子どもは成長ホルモンの分泌が夜間に活発になるため、寝つきの悪さは発達にも関わる深刻な問題である。
この本を読んで、私は「スマホの使用を制限する」だけでは不十分だと感じた。
なぜ制限すべきなのか、その理由と背景を大人がきちんと理解し、子どもに伝えることが大切である。
スマホは便利な道具である一方で、脳の性質に合わない使い方をすると、パフォーマンスを大きく下げてしまう。
この事実を、まずは我々大人が自覚し、日常生活の中で見直していく必要がある。
『スマホ脳』は、教育や子育てに関わるすべての人にとっての必読書である。
■【参考文献】
スマホ脳/アンデシュ・ハンセン 著、久山葉子 訳/新潮社/2020年
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